織田信長はどこで死んだのか（結論と根拠）

結論：織田信長は京都の本能寺（旧地）で最期を迎えた。事件は天正十年六月二日（旧暦）＝1582年6月21日（西暦）に発生。一次史料である『信長公記（しんちょうこうき）』は、信長が本能寺で自害（じがい）し、堂宇が焼失したため遺骸（いがい）は確認されなかったと記す。

根拠：『信長公記』、フロイス『日本史』、京都市・本能寺・大徳寺総見院などの公的情報・寺院史料の照合から、場所＝本能寺（旧地）／遺体未確認という学術的合意が成立している。

本能寺“旧地”はどこ？現在地との違い

旧地の位置：堀川四条周辺（京都市中京区）。旧地の中心は京都市立本能小学校付近にあたる。

現在地：寺町通御池（てらまちどおり・おいけ）の本能寺。これは1592年（文禄元）に豊臣秀吉の命で移転再建されたもの。

重要なポイント：事件現場＝旧地であり、今日参拝できる本能寺＝移転後の寺。両者の混同が「信長はどこで死んだのか」をめぐる誤解の主因になってきた。

当時の本能寺は堀（ほり）と高い塀（へい）を備えた広い寺域で、城郭的な防備を持つ「宿所」として機能していた。

本能寺は事件で焼失後、秀吉の都市政策の一環として現在地へ移転。境内には信長公廟（びょう）があり、顕彰と慰霊の中心となっている。

夜明け前、明智光秀（あけちみつひで）の軍勢が「敵は本能寺」と号し、早暁の京へ雪崩れ込む。
境内は包囲され、楼門（ろうもん）越しに火の粉が舞い、瓦（かわら）が爆ぜる音が近臣（きんじん）たちの鼓膜を打つ。森蘭丸（もりらんまる）らが奮戦するも、多勢に無勢。

史実の要点

一次史料の記述：『信長公記』は、自害→遺骸の秘匿・焼失という流れを示す。

地理・構造要因：寺域は包囲に弱い袋状の区画が多く、火災が一気に延焼。早暁の奇襲（きしゅう）が混乱を増幅した。

結論：物証としての遺体が残らないことは、史実否定を意味しない。むしろ「敵に渡さぬ」処置と大火災の相乗で、遺体未確認が自然に説明できる。

生存説：遺体未確認から江戸期以降に派生。伝承・講談の色合いが濃く、学術的には採られない。
場所の取り違え：「事件現場＝旧地」なのに「現本能寺＝現場」と誤解する見学記が散見。1592年移転を押さえれば解消する。
墓（はか）・廟（びょう）：実遺骸の所在は不明だが、本能寺の信長公廟、大徳寺・総見院（そうけんいん）などが菩提寺（ぼだいじ）・廟所として機能してきた。総見院には等身大の木造坐像（重要文化財）が伝わる（特別公開期あり）。

「場所の履歴」を正確に押さえる＝前提をそろえる力
　「旧地と現在地の区別」を誤ると、出来事の理解は容易に歪む。プロジェクトでも旧仕様／新仕様の差分を最初に可視化すれば、判断ミスや無駄な修正を大きく減らせる。たとえば新ECサイト移行時にURL設計・リダイレクト表を必ず共有する、などが実践例だ。
「遺体不明」が示す、証拠と解釈の距離感
　物証が欠けても、一次記録が多角的に裏づければ事実認定は可能。現代業務でもログ（記録）×現場確認で相互補完し、反証可能性を確保する姿勢が意思決定の質を上げる。